「ああ? 話はぐらかしてんじゃねーぞ!!」
「お前こそ、ちゃんと答えろよ。光太郎は、どっちの理由で怒ってるんだ?」
“どっち”って、なに?
なにとなにで、どっち?
コウは額がつくくらい間近で小津くんを睨んだあと、
突き飛ばすように彼を放した。
「てめーは沙弥とだけいりゃいいんだよ! 他の女に目ぇやってんじゃねえ!」
「めちゃくちゃだな。俺はその桂木に頼まれたからここにいるんだけど」
「知るか! いくぞ、真衣!」
「へ? え?」
な、なんで?
なにがどうなったの?
戸惑っていると、コウに舌打ちされた。
ムカつく。なにその態度。
「いいから来い!」
「ちょ、ちょっと! 痛いってば!」
腕をつかまれて、強引に引っぱられる。
コウは器用に片手で自転車を起こすと、あたしを放さないまま歩き出した。
小津くんが、やれやれって感じで苦笑しながら、あたしたちを見送っていた。


