少女狂妄

「うるさいよ。誰がなにをしようが、勝手」


 少女が奇妙な独り言を始めても、看護師たちはあまり気にしていない様子で仕事を続けていた。


「だから、私にも口出ししないでよ」


 少女の病状の一つとして、それは以前からあった物だった。

 他者には姿が見えず他者には声も聞こえない人物。

 幻覚と幻聴の症状があり、それは特定の人格を持って少女の前に現れていた。


「死ななかったのね……ちくしょう」


 血を吐きそうな声で、少女は悪態をつく。

 少しベッドの上で跳ねるような仕草をしたが、すぐに大人しくなる。

 代わりに幻覚を睨みつける。


「うるさい!」


 そう叫んだ時、少女の瞳が揺らいだ。

 入院以前からの度重なる自傷行為で、心臓に負荷が掛っていた。

 心臓は肥大して、異常を知らせる。