毒薬とまではいかないが、薬局で簡単に手に入る薬でさえ使い方を間違えれば命を危ぶめる。

 少女はそれを理解した上で、この行為に及んでいた。

 命を危ぶめることこそが少女の望みだった。

 錠剤を持つ少女の手は、傷だらけだった。

 喉を何度も切り裂き周囲を真っ赤に染めたてから、刃物は遠ざけられた。

 それでも、歯や爪は取り上げることが出来ない。

 皮膚よりも硬いそれがあれば、自傷は容易だ。

 少しずつ病んでいた少女は、あの事件から完全に狂ってしまっていた。

 少女はつまんだ錠剤を口に放り込んで、噛み砕く。

 一個ずつ丁寧に食べる。

 噛んでみたり唾液で飲み込んでみたり、粉になったのが鼻に入ってくしゃみをしたり。

 消灯時間の過ぎた真っ暗な病室で、少女の猟奇的な夜は更けていく。