そんな穏やかで微笑ましい光景が、凍りついた。

 女の子は足を止め、ランドセルの肩ベルトを握り締める。

 三毛猫も立ち止まり、しっぽを膨らませて警戒する。

 まだ明るい時間帯、黒装束は影が立ち上がった姿に見えた。

 本来地べたを這いつくばるはずの影が立ち上がり、女の子と猫の行く手を阻む。

 黒い靴、黒いズボン、黒いコート、黒い手袋。

 それだけなら、まだファッションとしてあり得たかもしれない。

 けれど、頭部を覆う黒い布は異様でしかなかった。

 双眸だけを外部にさらし、髪も口も鼻まで全てを布で覆っていた。

 双眸は真っ直ぐに、女の子を映す。

 布に覆われた奥の暗がりで、虹彩がは蒼く光って見える。

 蒼い眼をした黒装束が、女の子へ一歩足を踏み出した。