「ねぇ、日向さん……朱音って、誰か知ってますか?」


 ビクリと、日向さんの体が震える。


「どうして、そんなことを?」


 少し、日向さんの声が震えていたのは私の気のせいだろうか。


「変なこと聞いて、すみません。なんでもないです。ありがとうございます」


 聞いたのは私なのに、答えられるのが少し怖い。

 私は笑顔を取り繕って、日向さんから離れる。


「一年ぶり、ですね……」


 今はそんなことよりも、日向さんとの再会を喜ぼう。


「うん、久しぶりだね」


 一年経って、日向さんは以前よりも大人に見えた。

 背も、こんなに高かったかな。

 ますます、胸が高鳴る。


「ずっと、心配してた」


 私の家族が亡くなった事件。

 私はそれどころじゃなかったからよく知らないけど、きっと大きなニュースになった。