少女狂妄

 懐かしい、日向さんの声だった。

 その声を聞くと同時に、どうしてここに? と疑問が湧く。

 顔を上げると、公園の入口に怒ったように眉を吊りあげた日向さんが立っていた。

 射抜くような鋭い眼差しが見ているのは、私の前にいる女の子だった。


「蛍ちゃん、大丈夫?」


 日向さんが私に駆け寄るのとすれ違い、女の子は公園を走って出て行った。

 なんだったんだろう、あの女の子は。

 日向さんは、どうしてここに?

 倒れそうになる私の体を、日向さんが抱きしめる。

 全身に力が入らなくて、体を預けてしまう。

 私を抱きとめた日向さんの目は、冷たい氷が溶けたみたいに見覚えのある温かな物に戻っていた。


「なにか、された?」

「いえ、なにも……大丈夫です。でも、どうして?」


 なにもされてはいない。

 朱音という名前を聞いただけで、こんな風になってしまう私がどうかしてる。


「うん……ちょっと、近所の悪ガキだから。なんでもないなら、よかった」


 私を抱く日向さんの腕に力がこもる。

 私と日向さんは、こんなにも親密な関係だったかな。

 まだ、頭が混乱してた。