少女狂妄

「ちょっと、気分転換に行ってきます」


 コートを羽織って手袋をはめて、おじさんに挨拶をする。


「いつもの公園?」

「はい」


 さっきまで私が座っていたソファーで、おじさんは新聞を読んでいた。


「暗くなる前に帰っておいでね」


 おじさんに見送られて、私は家を後にする。


「寒っ」


 玄関の扉を開けると、思わず声が出た。

 声と一緒に出た白い息が昇って、灰色の空に溶けて行った。


「雪、降らないかな」


 これだけ寒いんだったら、降ってくれた方が楽しいのに。

 空を見上げながらアスファルトの道路を歩く。

 風で電線が揺れて、灰色の雲の下を黒い鳥が横切った。

 私はいつもの公園でいつものようにブランコに座ろうと向かう。


「ねぇ!」


 北風が梢を揺らす公園に入ると、いきなり後ろから声をかけられた。

 驚いて後ろを振り返と、以前三毛猫と遊んでいた女の子が立っていた。