少女狂妄

「おじさん……!」


 私は泣きながら、おじさんの背中に腕を回す。

 強く抱きしめて、おじさんを繋ぎとめる。

 私を救いあげてくれた人。

 私の希望。

 おじさんが傍にいてくれるためなら、なんだってする。

 ずっと待ち望んでいた人。

 このまま一緒に血の海へ引きずり込んでしまいたい。

 でも、踏みとどまってと裏腹な思いも抱く。

 例えおじさんが何者でも、私を愛してくれるならそれでいい。

 私のせいで不幸にならないなら、それでいいの。


「愛してるよ、蛍」


 樹と同じ言葉をおじさんがささやくのに、おじさんの言葉は甘く響いた。

 その言葉に、私はもう一人別の人を思い出していた。

 その人にそんなことを言われたことはないはずなのに、思い出す。

 おじさんの腕の中で、私は日向さんを思い出していた。