少女狂妄

 まずは左腕の傷口から。

 カッターで何度も切りつけ爪でえぐって、惨いことになっていた。


「病院に行った方がいいかもしれないな……」


 おじさんが眉をひそめる。

 こんな傷、どうってことないのに。


「それは嫌」


 病院に行くほどじゃない。

 行かなくったって、死んだりしない。


「傷痕が残るかもしれない」

「いいよ。どうせもう傷だらけだもん」


 私は今日も、タートルネックを着ていた。


「まあ、血は止まってるみたいだし……」


 おじさんはしぶしぶ、手当てを再開してくれた。

 血が止まってあらわになっているから、余計に傷口は惨く見える。

 でも、思ったよりも全然深くない。

 水で綺麗に洗い流された傷口をテープで合わせて、ガーゼと包帯で覆われた。

 右手の平は、液体バンソウコウを塗っただけで終了。