少女狂妄

「じゃ、行ってきます。後よろしくな」

「いってらっしゃい」


 食器を全部泡まみれにした頃、ようやく新聞を畳んだおじさんが立ちあがる。

 毎朝出かけていくけど、私はおじさんが何の仕事をしているのか知らない。

 スーツで出かけて行くのを見たことがないから、サラリーマンとかとは違うのかも。

 アヤシイお仕事だったりとか考えてもみるけど、アヤシイお仕事がなんなのか想像もつかない。

 この一軒家もおじさんの物だし、お金に不自由している様子はない。

 言えば、お小遣いだって必要なだけくれる。


「行ってきまーす」


 玄関の方から声がして、扉の開閉音と鍵がかけられる音がした。

 私はその音を聞き届けてから、蛇口をひねる。

 おじさんが何者でも、私は構わない。