少女狂妄

 私の手に重なるもう一つの手。

 私の手じゃない。

 私のもう片方の手は、手袋をはめたまま体の横にある。

 それに、私の手はこんなにも大きくない。

 重ねられた手は、私の手とはまったく違った。

 私よりも大きくて色が濃い、男の人の手だった。

 震える私の手とはまったく違う、まるで冷たさを感じていないように平然としている。

 水に浸かる時もそう。

 波紋一つ立てなかった。

 重ねられた手が、私の手を握り締める。


「嫌っ……!」


 水飛沫を立てて、手を桶から引き抜く。

 手を握られたのに、握られた感触がしなかった。

 水に浸けていた手が大きく震える。

 手だけじゃない。

 全身が震えて、歯の根が噛み合わない。


「樹、どうして……」


 樹(いつき)、と私は名前を呼んだ。