少女狂妄

 広い霊園の中に点在する水場。

 その一つに到着した私は、備え付けられた水桶と柄杓を手にする。

 こういう場所には神社にあるような手水所がピッタリな気がするけど、あるのはステンレスのシンクに蛇口だった。

 そのステンレスのシンクに水桶を置いて、蛇口をひねる。

 勢いよく水が飛び出し、あっという間に水桶はいっぱいになってしまった。


「…………」


 じっと、その水面を見つける。

 蛇口を締めた水面は穏やかで、幽霊みたいに透き通った姿で私が映っていた。

 冷たそうな水。

 私は誘われるように手袋を外し、その水の中に手を浸した。

 手の甲には新しい傷があった。

 おじさんじゃなくて自分で手当てをしたから、モイストヒーリングなんて高級なバンソウコウじゃない。

 普通のバンソウコウだった。

 安物のバンソウコウはいとも簡単に水の浸入を許して、傷口がしみる。