少女狂妄

「じゃあ、俺も」


 日向さんも水飲み場まで来て、汚れた手を洗う。


「はい」


 手を洗った日向さんから差し出されたのは、ハンカチだった。

 コートも持ってない私は、ハンカチも持っていない。


「ありがとうございます」


 恐縮しながらハンカチを受け取り、手と缶を拭かせてもらう。


「冷えちゃったかな?」


 以心伝心みたいに私も思っていたことを日向さんが口にする。

 私の手の中で、缶は同じように冷たくなっていた。


「貸して」


 日向さんは私の手の中からハンカチと一緒に缶を取り上げて、それを振る。

 飲む前によく振るように言うけど、なんで日向さんがそれをするのかわからなかった。


「大丈夫そうだね」

「熱っ!」


 返してもらった缶は、冷たい手には熱く感じられた。


「なんで、どうして?」


 まさか、振った摩擦熱で加熱されたってわけじゃないだろうし、なんでなんでと不思議に思う。

 得意げに笑う日向さんが、魔法使いに見えた。