少女狂妄

「どうしたの?」


 驚いた顔のまま、日向さんが私の様子を伺ってくる。


「え、あ……」


 私は蒼ざめて、言葉が出ない。

 喉になにかが詰まってるみたいだった。

 それ吐きだそうにも、なんと答えればいいのかわからなかった。

 まさか、自分でつけた傷だなんて言えなかった。

 言ったらきっと、軽蔑される。

 なのに、体のいい言い訳さえとっさに出てこなかった。


「静電気?」

「えっ」


 喉のつっかえを越えて、驚きが声に出る。

 今度は私が目を丸くする番だった。

 もしかして、見られてない?

 押さえた手をそっと外し、袖を引っ張って傷を隠す。


「大丈夫?」

「あっ、はい。大丈夫です!」

「よかった」


 日向さんはにっこり笑い返してくれて、喉の引っ掛かりが取れる。

 私が手を引っ込めたのを、静電気が起きたせいだと勘違いしてくれたみたいだった。