少女狂妄

「蛍ちゃんって、飲み物なにが好き?」


 沈黙に耐えかねたのか、日向さんが話題を振ってくれた。


「飲み物、ですか?」

「そう。温かいの」


 温かい飲み物か、と考える。

 家だと緑茶がよく出るけど、好きかって聞かれると首を傾げるしかない。

 コーヒーは苦くて好きじゃないし、冷たいなら炭酸が好きだけど熱い炭酸はむせる。


「そうですね……ココア、とか?」


 ミルクティーと悩んだけど、やっぱりココアの方が甘くて好き。


「わかった。じゃあ、ちょっと待っててね」

「えっ……?」


 そう言うと立ち上がって、混乱する私を置いて公園から走り去ってしまった。

 ベンチに一人残された私は、日向さんの香りがするマフラーに包まれて、ただ待つことしか出来なかった。