少女狂妄

「ありがとうございます」


 日向さんの言葉に甘えて、私は素直にマフラーを受け取った。

 正直、とっても寒かったから嬉しい。

 日向さんのマフラーは大人の男の人みたいな匂いがした。

 高校生はまだ未成年だし、私と同じ子どもだってわかってる。

 でも、中学生の私から見たら高校生は十分大人っぽくてドキドキしちゃう。


「日向さんは、寒くないですか?」

「俺はコート着てるから、大丈夫」


 笑って言ってくれるけど、それでもやっぱりマフラーがあった方が温かいことに変わりはないと思う。

 今日も冷えるから。


「どうしてこんな所で勉強しているんですか?」


 こんなに寒いのにって、首を傾げる。

 家とか学校とか、図書館とか。

 こんな寒空の下じゃなくてもいいはずなのに。


「……妹がいるから」


 遠くを見るように、日向さんが答える。

 その言葉が、チクリと胸に引っ掛かる。

 妹がうるさくて、家じゃ落ち着いて勉強出来ないってことなのかな。

 年の離れた妹なのかも。

 そんなことをいろいろ考えたけど、日向さんに直接聞けなかった。

 どこか遠くを見るような日向さんの目に、私は黙り込む。