少女狂妄

 思ったよりも、厳重に封がされているわけではなかった。

 ガムテープがすっかり取り去られて、半透明の衣装ケースだけになる。

 蓋を開けようと手をかけたとき、中のブルーシートがうごめいた。

 バランスを崩した衣装ケースが横倒しになり、蓋がはじけ飛んだ。

 腐敗臭が強くなり、部屋の中に充満する。

 衣装ケースの中から転がり出たブルーシートから、猫の腐乱死体が転がり出ていた。

 そして、ゆっくりとブルーシートの合わせ目から手が伸びる。

 ブルーシートの中から現れたのは、衰弱した女の子だった。

 公園で、今は腐乱死体となっているあの猫と遊んでいた女の子。

 最後に会った時のことが、とても昔のことのように思える。

 あの公園で見た屈託のない笑顔が見る影もない。

 憔悴しきったなかで、褐色の目だけが油膜のように光る。

 そして、女の子は――床に落ちていたナイフを手に取った。