少女狂妄

「なのに……蛍ちゃんがあの女の子に会ってから、歯車が狂った」


 公園で見かけた女の子。

 その後で行った墓参りで私は樹と再会して、家の外でなら日向さんとまで会えるようになった。

 それまでは、傍にいても気づかなかった。

 見えていなかった。

 きっと最初っから、この家には三人で暮らしていたのに……

 朱音の名前を聞いたのも、あの女の子が最初だった。


「だから、殺したの?」


 腕を張って、日向さんとの間に空間を作る。

 やっと思うように膨らんだ肺で、私は日向さんの目を見て問いかけた。

 私が時鳥蛍として死なずに生きるために作り上げた、偽物の記憶。

 その虚構の世界を壊さないように、何も知らずに入り込んだあの子を排除した?


「俺の努力も、アイツが無駄にしたけどね」


 努力という言葉に背筋が凍る。

 殺人を、どうしてそんなポジティブな言葉で呼べるのか理解できなかった。