少女狂妄

「でも、蛍ちゃんだって朱音には変わりないよ。俺の可愛い妹だ」


 血まみれの手が、私の髪を撫でる。

 ベタつく血の感触が恐ろしい。


「ずっと、俺だけを頼って生きてきたのにね。俺だけが、ずっと朱音を守ってきた」


 日向さんから、むせ返るような血の臭いがした。


「母さんからも、俺が守ったのに……」


 私が家族を惨殺されたと思い込んでいた、あの事件の真相。

 それも、樹が教えてくれた。

 日向さんは、私を守るために……?


「俺には、朱音さえいればいい。例え俺のことを忘れてしまっても、朱音の呼吸を傍で聞いてさえいられたら」


 ぎゅっと、私を抱く手に力が入る。

 肋骨が軋んで、息が苦しい。


「日向さ……」


 抵抗しようとしても、力じゃ敵わない。

 言葉を口にするだけでも酸素が足りなくて、苦しい。