少女狂妄

 朱音が日向さんの妹だと聞かされて、記憶が途切れた。

 その後、この部屋で樹の瞳の色を知り、ベッドから起き上がった。

 ベッドから下ろした私の足に触れた血まみれのマフラー。

 あの時、私に新しい怪我はなかった。

 怪我があったとしても、あんな大量の血を流していたら起き上がれなかったと思う。

 じゃあ、あの血は誰の血?


「……猫の血だよ」


 一拍ためてから、樹が答える。


「猫?」

「そう、三毛猫。君が公園で見かけた、あの猫だよ」


 私に話しかけてきた女の子と一緒にいた三毛猫を覚えている。

 あの時の女の子は、私じゃなくて朱音に話しかけていたつもりだったんだろうな。


「その猫の血が、どうして?」


 あんなに大量の血液。

 小さな猫の体から出てしまっては、どうなるか。

 わかっているのに、現実感に乏しい。