少女狂妄

「俺が……俺が、あの日貴女を襲ったレイプ犯だと知ったから……だから、アパートを出たんじゃないのか?」


 女の返事も求めず、男はただ思いをぶちまける。


「それとも、最初っから俺がそうと知って近づいたのか? この目が、俺が日向の父親である証だ!」


 顔を近づけ、間近で女の顔を覗き込む。

 嫌でも男の虹彩が目に入るように、女を見る。

 褐色の瞳にブルーがまだらに浮かぶ、虹彩異色症の瞳。


「日向くんの存在を聞いて、疑惑はあった。貴女から過去の被害を聞いて、確信に変わった。でも、貴女が俺を愛してくれたら、過去の罪も洗い流されるんじゃないかって……そんな愚かな夢を見てしまった」


 女をつかむ男の手から、力が抜けていく。

 あの日、公園の前で女の口を塞いだ黒い手。

 女を引きずり込み、女の心を惨殺した。

 今日は手袋をはめていない。

 けれど、男の手は真っ黒に穢れていた。