少女狂妄

「母親が死んだっていう事件の記憶も、ほとんど夢みたいなものだよ。多大なる勘違い。過誤記憶とかかな」

　私の記憶の中で、お母さんは頭部を潰されていた。

あんな状態で蘇生するはずがない。

だったら、あの遺体は別人だと考えるしかない。


「図書館で新聞を漁ってみなよ。君が言っているような事件そのものが存在しないから」


　あの死体まで、幻だというの？


「実際に見たというより、後からの思い込みによるものという方が正しいかな。小さい頃、迷子になった話を親から聞くと、実際に迷子になった事実がなくても迷子になった記憶を思い出すようなものさ」

　笑いながら、博識を語る。

　例え同じ朱音の一部であっても、私と樹はまったくの別人であると思い知らされる気がした。