少女狂妄

 思い出される、入院の記憶。

 私だけど私じゃない少女の記憶。


「あの頃は唯が主人格だったから。あれは蛍の体験じゃないんだよ。唯を見て知っているだけの体験」


 思い出される記憶に、私の姿がある。

 私を見ている私の記憶。

 私を見ている私がいるなら、そこにいる私は誰?


「そもそも蛍は、本当の記憶なんてほとんど持ち合わせちゃいないよ。日向だって、近所のお兄さんぐらいの認識だったんだろう? でも彼は、僕らと血のつながった兄弟だ」


 朱音を自分の妹だと、日向さんは確かに言っていた。

 その記憶が本物なら、朱音である私と日向さんの間には血の繋がりがある。

 分断された記憶のうち、私は日向さんを自分の兄だと認識するに足る体験がない。

 日向さんも、私を妹としては扱わなかった。

 私は仕方がないとしても、どうして日向さんまで?