少女狂妄

「心を引き千切って、記憶と体験を分断して、そうしなければ僕らは耐えられなかった。一人で抱え込むには、あまりに辛い記憶と体験ばかりだったから」


 誰が私たちを、朱音を引き裂いた?


「もっとも、辛い体験ばかり引き受けた唯は、何度も自殺しちゃったけど」


 さっきも、名前が出てきた唯という人格。

 私が幻覚として見て交流が持てるのは樹だけ。

 そんな名前の人、私は知らない。


「いや、蛍も唯のことは知ってるはずだよ。病院に入院していた覚え、あるんだろう?」


 私が樹と会話をするようになった、あの事件の後。

 私は自殺未遂を繰り返して、病院に入れられていた。


「記憶にはあるけど、あんまり自分の体験だっていう感覚は薄いんじゃないかな? 客観的で、その時の感覚に乏しい。今の僕みたいな立ち位置」