少女狂妄

「記憶が、記憶がないの」


 半端なところで途切れる記憶。

 包丁で指を切っておじさんに抱きしめられて、その後は?

 眠った覚えがないのに、眠った痕跡のあるベッド。

 日向さんと再会して、その後私はどうした?

 今だって、病院から家までどうやって戻ったか覚えていない。

 記憶が、欠落している。


「そりゃあ、そうだよ」


 なのに、樹は当然と嗤う。


「今は蛍が表に出ていることが多いけど、二十四時間占領しているわけじゃない。自覚のない君に代わって病院へ行って薬を飲んだり、他の人格達だって好きなことをしたいさ」


 失われた記憶は、他の人格達が持っている。

 私が眠っている間、意識のない間、私じゃない私が私の体を動かしている。

 ぞっとした。

 幽霊にでも取り憑かれたみたい。