少女狂妄

　女の言葉に、青年が廊下を睨む。

　廊下の奥から、男が走ってくる。

　青年の瞳と酷似した、褐色と青の虹彩を持つ男が女の病室にたどり着く。


「どうして、ここに……」


　少女のもとにたどり着いた男も、青年と同じ言葉を口にする。


「こっちのセリフだ！　どうして、こんな怪我を……！」


　視界に入れるのもおぞましいと言わんばかりに、青年は男から目を逸らす。

　いたわるように、愛しむように、茫然自失とした少女に触れる。


「裕二くん！」


　一触即発の雰囲気にも関わらず、女は明るい声でベッドから降りてスリッパに足を引っかける。

　女の年頃は、三十代後半といったところだろうか。

　けれど、満面の笑みを浮かべる姿に年相応の落ち着きがなく、まだ二十歳そこそこの娘のようだった。