少女狂妄

「その怪我……！」


　少女に駆け寄った青年は、更に驚きの光景を目の当たりにした。

　少女の右目を覆う漂白された包帯の色があまりに痛々しい。

　女と揃いのカーディガンの下では服が裂け、赤黒い血の跡が生々しく残っていた。

　花瓶を床に置いて跪き、少女の顔を覗き込む。

　頭部まで巻かれた包帯に触れる手が、震える。

　青年が驚きに目を見開くと、少女も青年の目を見て見開く。

　見開かれた、少女の目。

　外周のダークグリーンから瞳孔に向かって琥珀に移り変わる。

　まるで猫のように鮮やかな虹彩。

　その目から流れる涙が、頬を伝い床に滴っていく。

　包帯に覆われた右目も濡れて、血の色が滲んでいた。


「足音が聞こえる」


　見つめあったまま凍りつく青年と少女とは無関係に、女がつぶやく。