少女狂妄

「おはようございます」


 花束を持った青年は病院に着くと、ナースステーションの看護師たちに挨拶をして入院病棟を進んでいく。

 迷いのない足取りで向かった先には『時鳥美緒』と書かれたネームプレート。

 そのプレートが掲げられた病室の前で立ち止まると、青年はノックもせずに扉を開けた。

 病室に入ってまず目につく位置にベッドは置かれており、窓辺から朝日が差し込んでいた。

 サイドボードには花瓶が置かれ、そこにはしおれかけた花が飾ってある。

 ベッドが一床あるだけの病室の主は、ピンクのカーディガンを羽織ってベッドに起き上がっていた。


「お邪魔しますよ」


 青年がそう声をかけても、女は答えない。

 窓の外を見つめるばかりで、青年に気づいた気配もない。

 青年も一言声をかけただけで、それ以上はなにも言わなかった。