少女狂妄

「お待たせしました~。こちらでよろしかったでしょうか?」


 花束が完成して、青年が確認する。


「はい、ありがとうございます」


 出来あがった花束は、青年が選んだビタミンカラーのガーベラに合わせて、カーネーションやネイビーが加えられた華やかな物になった。


「――円になります」


 青年は出来あがった花束を受け取り、代金を払う。


「あれっ。お客様、どこかお怪我を……」


 受け取った紙幣を確認した店員の顔が、蒼ざめる。

 紙幣には、生乾きの赤い汚れがついていた。

 店内にある花は全て刺抜き等の処理が施されているが、誤って怪我をさせてしまったのではと慌てる。


「ああ、大丈夫ですよ。俺のじゃないから」


 けれど、青年は平然としたものだった。

 右の袖を確認しただけで、なんでもないと答える。

 紺色のピーコート。

 その袖が湿り気を帯びて黒くなっていた。