少女狂妄

 指の腹に刃を押しつけても、それだけじゃ痛みを感じるだけ。

 切っ先を皮膚が受け止めて、痛覚を刺激する。

 包丁の正しい使い方を私は知っていた。

 刃を肌に当てたまま、そっと引く。

 嫌な感触が指先から腕を伝い、背筋がざわつく。

 指先の皮膚を裂いたその先から、肉がのぞいた。

 一瞬のぞいた肉から血が浸み出し、傷の形に血溜りが出来る。

 その傷口に爪を添えて皮膚を引っ張ると、傷口が広がった。

 傷口から血が溢れて水玉になる。

 その水玉も膨らんで、決壊してしまう。

 赤い滴が指先から手のひらへと伝い落ちる。

 その流れを逆さまに舌でたどれば、吐き気がするような味が広がった。


「美味しくない」


 舐めた指先の血はもう止まっていて、無理矢理こじあけても滲むばかり。

 指先の皮は意外と厚くて、毛細血管を少し傷つけただけだった。