日向さんの目は、樹とおじさんみたいに不思議な色をしていた。

 注視することもなかった今までは、ずっと黒い目だと思っていた。

 でも、違う。上下の瞼に隠れて、ほとんど見えなかっただけ。

 私の怪我に驚いて、目を見開いている今ならありありと分かる。

 褐色の虹彩に、淡くブルーがかかっている。

 縁が一番青味が強くて、本当に綺麗。

 でも、だから隠れて気付かなかった。

 暗褐色の虹彩に、一滴青色を落としたみたい。

 縁を伝って広がって、瞳孔に向かうに従って淡くなる。

 色合いはおじさんに、そのグラデーションの作りは樹に、とてもよく似ていた。


「わかった?」


 頭の中で、樹が嗤う。

 生きていたお母さん。

 私を朱音と呼ぶ人たち。

 樹とおじさんと日向さんの目の色。

 わからない。

 なんにも、わからないよ……!