少女狂妄

 震える手を抑えながら、私はその病室の扉に手をかけた。

 音も立てずに、扉は滑らかに開かれていく。

 そして、私は名前の主を見た。

 私の存在にも気付かず、ベッドの上に上体を起して窓の外を見ている。

 その横顔。

 私と同じカーディガンを羽織ったその姿に、涙があふれた。

 忘れるはずがない。

 間違えるはずがない。

 でも、どうして?

 溢れる涙が右目を刺す。

 傷口の痛みに、更に涙が出た。


「おかあさん……」


 病室に掲げられた名前も、見つけたその横顔も、私のお母さんのものだった。

 一年前のあの日、クリスマスツリーの袂で殺されたはずお母さん。

 そのお母さんが、生きてそこにいる。


「ど、して」


 疑問を呈する唇も、震えて上手く動かない。

 足に力が入らずに、私は扉に手をかけたまま座り込んでしまった。