少女狂妄

 待合室だけじゃなくて、入院病棟も人気がなかった。

 みんなまだ眠っているのかな。

 静かすぎて、足音を立てるのもはばかられる気がした。

 私はゆっくりと、なるべく足音を立てないように進んでいく。

 病室の扉にはそれぞれ入院患者の名前が書かれている。

 たくさん名前が掲げられているのが大部屋で、一人だけなのは個室なんだと思う。

 そんな入院患者の名前を見ていても、日向さんの入った病室はわからない。

 どこの部屋からも、日向さんの声はしなかった。

 けれど、代わりに私は信じられない物を見つけてしまった。

 個室らしい病室に掲げられた、一つの名前。

 その名前に、私は心臓を鷲づかみにされる。

 膝が震えて、嫌な汗がどっと吹き出す。

 ただの同姓同名かもしれない。

 でも、こんな偶然ってある?