少女狂妄

「樹……?」


 誰もいないエレベーターの中で声に出してみる。

 だけど、樹から返事が来ることはない。

 思うように話が出来たら、それは幻覚じゃなくてただの妄想だ。

 私は諦めて、エレベーターの壁にもたれる。

 壁にもたれると、エレベーターの奥の壁にある鏡が目に入った。

 そういえば、自分の目をまじまじ見たこともない。

 私の目は、何色なんだろう……

 壁を離れて、鏡の前に立つ。

 自分の目を覗きこもうとすると、鏡の中に立つ私の後ろでエレベーターの扉が開いた。

 もたもたしていると、まだ下の階に戻されてしまうかもしれない。

 私は鏡を諦めて、エレベーターを降りた。

 ナースステーションの前を素通りして、私は日向さんを探す。

 どこかの病室に入ってしまったのか、通路には誰もいない。