少女狂妄

 待合室のベンチに腰掛けて、カーディガンの封を切る。

 血まみれでズタボロの服を隠すように、それを羽織った。

 左目を動かすたびに、包帯の下で右目も動く。

 眼球が動くたびにうずいて、えぐり出してしまいたいような衝動に駆られた。

 とても綺麗なおじさんの目。

 私の虹彩は、どんな色だろう。

 まだ早い時間なこともあって、待合室にはほとんど人がいない。

 大きな病院の大きな待合室。


「ねえ、蛍。どうして目を潰そうとしたんだい?」


 私の左隣に、長いマフラーを巻いた樹が現れる。


「人の目はちゃんと見るようにって言ったのに」


 樹の目を、私の左目が捕らえる。

 相変わらず、綺麗な目で嫌な笑みを浮かべている。


「見たよ……ちゃんと、おじさんの目」


 樹と言葉を交わすのに、唇が震えるようだった。