少女狂妄

「まだ先生と話があるから、これ羽織って外で待ってなさい」


 おじさんが私を覗き込む。

 私は至近距離で、おじさんの目をまじまじと見た。


「大丈夫か?」

「うん……ありがとう」


 私は、おじさんの瞳から目が離せないまま、売店で買ったらしいピンクのカーディガンを受け取った。

 樹の目、おじさんの目、日向さんの目、私の目……

 私はぼんやりとしたまま一礼をして、診察室を出る。

 間近で見たおじさんの目は、樹の目よりも不思議だった。

 グラデーションじゃなくって、はっきりと色が分かれている。

 何度もおじさんの目は見てきたはずなのに、樹に言われて初めて気がついた。

 暗褐色とブルーが入り混じった、紺色の瞳。

 抉り出したくなるほど、綺麗な目だった。