毒舌家で気分屋なあなたに恋をした

お店の中では不毛なやりとりが繰り広げられていた。


「だから、これ買ってー」


「い、嫌だし、なんで浅野くんのを私が買わなきゃいけないの!それに値段が高い!」


「あ、じゃあこの本お前買ってよ。そしたらその後俺が奪うから」


「さらっと恐ろしいこと宣言しないでくれる!?それに、この本なら友歌が買えばいいんじゃない?」


「え、なんでうち!?」


「だって友歌、この本のアニメ見てたし好きなんでしょ?」


「い、いや確かにそうだけど…」


「尾川が買ったら奪えないじゃん」


「だからあなたは観点がおかしいの!」


結沙は叫んだ。




✽




そんなたわいない会話を繰り返しながら、お店を見回った。


特にめぼしい物もなかったため、結沙は何も買わなかった。


そして見回り終わると、外に出た。


すると、薫が尋ねる。


「で、どうするの?」


「うーん、中古本屋とか行きたいんだけど…。浅野くんって中古本屋とか行くの?」


「いや、行かないけど。だって他の人が読んでた本とか使いたくないけがれる」


「け、けがれるとまで言わなくても…」


結沙は苦笑した。


そのまま道をあてもなく歩いていると、友歌が聞いた。


「で、結沙、中古本屋行くの?」


「え、あー、うーん…えっと…」


「ちょ、先輩どっちですか」


友歌はちゃかすように言った。


結沙は迷っていた。


(私は行きたいけど…浅野くんは行きたくないっぽいし、いいか…)


「あー…うん、今日は…いい、かな……」


「え、ホントに行かなくていいんですか」


「う、うん、まぁ……」


結沙が濁らせながら答えると、不意に薫がつぶやいた。


「行きたいなら行けばいいじゃないですか、先輩」


「え?ちょ、でも」


「中古本屋ってどっち?」


薫の声に友歌が返す。


「ここから右に真っ直ぐ行ったところ」


「ん」


薫は短く言い、右に向かって歩き出した。


結沙は驚いた。


(私が遠慮してたから、それを見抜いて行かせてくれたの…?)


薫の新たな一面に触れ、結沙は戸惑った。


(…優しいとこも、あるんだ)


結沙は薫の背中を、じっと見つめた。