毒舌家で気分屋なあなたに恋をした

お店の中では不毛なやりとりが繰り広げられていた。


「だから、これ買ってー」


「い、嫌だし、なんで浅野くんのを私が買わなきゃいけないの!それに値段が高い!」


「あ、じゃあこの本お前買ってよ。そしたらその後俺が奪うから」


「さらっと恐ろしいこと宣言しないでくれる!?それに、この本なら友歌が買えばいいんじゃない?」


「え、なんでうち!?」


「だって友歌、この本のアニメ見てたし好きなんでしょ?」


「い、いや確かにそうだけど…」


「尾川が買ったら奪えないじゃん」


「だからあなたは観点がおかしいの!」


結沙は叫んだ。









そんなたわいない会話を繰り返しながら、お店を見回った。


特にめぼしい物もなかったため、結沙は何も買わなかった。


そして見回り終わると、外に出た。


すると、薫が尋ねる。


「で、どうするの?」


「うーん、中古本屋とか行きたいんだけど…。浅野くんって中古本屋とか行くの?」


「いや、行かないけど。だって他の人が読んでた本とか使いたくないけがれる」


「け、けがれるとまで言わなくても…」


結沙は苦笑した。


そのまま道をあてもなく歩いていると、友歌が聞いた。


「で、結沙、中古本屋行くの?」


「え、あー、うーん…えっと…」


「ちょ、先輩どっちですか」


友歌はちゃかすように言った。


結沙は迷っていた。


(私は行きたいけど…浅野くんは行きたくないっぽいし、いいか…)


「あー…うん、今日は…いい、かな……」


「え、ホントに行かなくていいんですか」


「う、うん、まぁ……」


結沙が濁らせながら答えると、不意に薫がつぶやいた。


「行きたいなら行けばいいじゃないですか、先輩」


「え?ちょ、でも」


「中古本屋ってどっち?」


薫の声に友歌が返す。


「ここから右に真っ直ぐ行ったところ」


「ん」


薫は短く言い、右に向かって歩き出した。


結沙は驚いた。


(私が遠慮してたから、それを見抜いて行かせてくれたの…?)


薫の新たな一面に触れ、結沙は戸惑った。


(…優しいとこも、あるんだ)


結沙は薫の背中を、じっと見つめた。