「………っ」


ゆっくり、目を開けた。


見えてきたのはいつもの図書室で。私は静かに安堵した。

久しぶりに、変な夢を見てしまった……。


ため息がこぼれる。

額に手を当て、さっきまでの記憶を消そうと頭を振った。

と、そのとき図書室の扉が開く。


そこから見慣れた顔が覗いた。


「あ。やっぱりここにいた」


とその人物は笑顔を見せた。

彼の名前は、笹原洸。

180を超えているであろう、高い身長。

整った目鼻立ち。

少しくせのある色素の薄い髪。

眩しくて、太陽みたいな笑顔

おそらく、"イケメン"の分類にはいるだろう。


ニコニコのまま、私に近づいてくる。


「何、始業式、サボり?」
「……うん。だって長いし」


私がしれっと答えると笹原が呆れたようにため息をついた。


この図書室は、本校舎から一番離れたC棟の一番端にある、第三図書室だ。


人はほとんど来ない。

つまり、穴場だ。


「じゃ、クラスも知らない?」


私はうなずく。


「二組。同じクラスだぞ」
「へぇ」
「反応薄すぎだろ」



だって、違うクラスでも変わらないから。
なんて事は言わない。



私は読んでいた本を閉じ、カバンにしまった。


「帰んの?」
「うん」