いつものように、病室を訪れた。
養父母の姿はなく、世界は一人で眠っている。
腰をおろし、鞄からとりだした本を膝にのせた。
なれきった一連の動作。
窓の外に視線をふりむけると、視界が紅く染まった。
誰もが心に憧憬としてもつような、奇跡のように鮮やかな夕陽だ。
さしこむ陽が、世界の陶器のように白い頬にも、ほんのり赤みをのせる。
やれやれ美しいな、と僕は思う。
膝の本に視線を転じる。『童話の世界』。
なぜこんな本を選んだ? 憶えていない。
表紙のイラストをぼんやりながめる。
網膜の情報と、思考がうまくむすびつかない。
これは————不意に、そのことに気づく。
描かれているものに、その意味に。
養父母の姿はなく、世界は一人で眠っている。
腰をおろし、鞄からとりだした本を膝にのせた。
なれきった一連の動作。
窓の外に視線をふりむけると、視界が紅く染まった。
誰もが心に憧憬としてもつような、奇跡のように鮮やかな夕陽だ。
さしこむ陽が、世界の陶器のように白い頬にも、ほんのり赤みをのせる。
やれやれ美しいな、と僕は思う。
膝の本に視線を転じる。『童話の世界』。
なぜこんな本を選んだ? 憶えていない。
表紙のイラストをぼんやりながめる。
網膜の情報と、思考がうまくむすびつかない。
これは————不意に、そのことに気づく。
描かれているものに、その意味に。



![he said , she said[完結編]](https://www.no-ichigo.jp/img/book-cover/1737557-thumb.jpg?t=20250401005900)