『世界』と『終』  ——僕がきみを殺したら——

自分の裡になにかが芽生えた、などとは認めたくない。

子どものころ見たハリウッド映画にあった。
ひとり地球に取り残されれてしまった異星人と、少年の心の交流。
さしのべられる、手と手。

あの異星人は、もともと高度で複雑な感情をもつ、平和主義者だ。はるばる地球にやってきた目的は、植物採集。


あんな心温まる話は期待できない。

誰かに心寄せることは、不合理で愚かだ、そう世界は言った。


僕に言わせれば、誰かに、なにかに、心寄せることは———恐怖だ。
いまだかつて経験しことのない、感覚。

失うかもしれない現実を、理屈をこえて拒絶している。


世界に恐怖し、膝を屈し、みじめに敗北している。