『世界』と『終』  ——僕がきみを殺したら——

西森世界は、極限をこえた恐怖のため、一時的な昏睡状態におちいった、とみられていた。

自己防衛のための、一種の仮死状態。
そうとしか説明しようがないのだろう。


意識が戻るのか戻らないのか。意識が戻ったところで、はたして後遺症はないのか。

すべて「現時点ではなんともいえない」とのことだった。
医師としては、そう診断をくだすしかないだろう。

健康状態に問題はなく、ただ眠りつづけているだけだ。

まるで、精神が肉体を留守にして出かけてしまった、というように。
そう担当医は表現した。


世界はどこにいるのだろう————


その想いが、ただ心を占める。

心・・・・僕にもそんなものが、あったのだろうか。