『世界』と『終』  ——僕がきみを殺したら——

ほんとに降ってわいたような話で・・・


西森の養母は、もとい世界の養母の西森さんは、なんどもそうくり返した。


「かぐや姫みたいに、とつぜん授かった娘だから、いつか月に帰ってしまうんじゃないか。
なんて、主人と冗談半分で話したりしてたんですけど・・・まさか、こんなことに・・・・」


語尾が、涙でにじむ。



太陽は思いがけない速さでその高度をさげ、部屋は薄闇につつまれてゆく。

翳ってゆく部屋のなかで、彼女は肩をふるわせ、手のひらで顔をおおう。

僕は音をたてぬよう立ち上がり、部屋をあとにした。

ひとり廊下を歩く。
彼女の嗚咽が、耳の底で長く尾をひいた。