『世界』と『終』  ——僕がきみを殺したら——

ひとつだけ、気になったことを口にした。

「———失礼ですが、西森という名字は・・・」


「わたしどもの名前です」
すいと僕に視線をうつして、彼女はこたえた。


「元の名字は・・・はて、なんでしたっけね。
その名前よりも、西森姓を名乗りたいと言ってくれて。気を遣っているのかと思ったんですけど。
一緒に暮らしているのに名字が違うのはイヤだと、そういうものですから」



ほんとに降ってわいたような話でね。
この年になって、遠縁とはいえ、娘を授かって。
ちょっと今の若い子らしくない、かしこまっているようなところがありますけど・・・
ほんとに気だてがよくて、可愛くてね・・・


主人なんて、世界の花嫁姿を見るまで死ねない、なんて言い出しまして・・・