中央にベッドがひとつ。仕切りのカーテンがないのは、個室のためか。

ベッドの隣に、背もたれのない丸いパイプ椅子がふたつ置いてある。
その一つに腰をおろし、こちらに顔をむけている女性と目があった。


はじめまして、僕は軽く頭をさげる。表情をつくる気にはならなかった。


「こんにちは」
目尻にしわを寄せて、彼女がこたえた。


ななめに射し込む夕陽をあびて、ベッドの上で眠りつづける少女。
毛布から出ている細い腕に刺された、点滴の針。下半身からもチューブがのぞいているのは、ドレーンが挿入されているのか。


寄り添っているのは、母親にしては年かさに見える初老の女性だ。

すすめられるまま、パイプ椅子に腰をおろす。