そで口であごをぬぐう。
見上げる西森と、目が合った。
彼女のまなざしは、ただひとつのことを訴えていた。
「逃げてください」と。
俺は——・・・
なぜか、そのまなざしに応える言葉を探そうとしている。
西森———
心の中で、初めて彼女の名を呼んだ。
いま、幸せだ。
こんなにも濃密に死に触れている。
リミットがあるから、だからこそ永遠に近いくらいに凝縮された時間。
このありふれない瞬間を、自分以外の誰かとぴったりと共有している。
生と死とどちらに針が振れてもかまわない———まぎれもなく、幸福なのだから。
見上げる西森と、目が合った。
彼女のまなざしは、ただひとつのことを訴えていた。
「逃げてください」と。
俺は——・・・
なぜか、そのまなざしに応える言葉を探そうとしている。
西森———
心の中で、初めて彼女の名を呼んだ。
いま、幸せだ。
こんなにも濃密に死に触れている。
リミットがあるから、だからこそ永遠に近いくらいに凝縮された時間。
このありふれない瞬間を、自分以外の誰かとぴったりと共有している。
生と死とどちらに針が振れてもかまわない———まぎれもなく、幸福なのだから。



![he said , she said[完結編]](https://www.no-ichigo.jp/img/book-cover/1737557-thumb.jpg?t=20250401005900)