『世界』と『終』  ——僕がきみを殺したら——

「終さん、この場を離れたほうが———」


「時計の針から、銅線を外せばいいのか?」
西森の言葉をさえぎって訊く。


「そう、ですけど、なぜ——・・・」

「俺にも理解できない」


両手を使いながら、光源を確保したい。

もどかしく携帯を操作する。設定画面から、バックライトの点灯時間を20分に変更する。
そのままでは、10秒かそこらで暗くなってしまうからだ。

携帯を床において、アクリルの継ぎ目を指でなぞりながら検分する。接着剤で留めてあるようだ。


半円形に加工したアクリルプレートの縁を5㎜ほど外側に曲げ、接着面を作ってある。

成形したパーツを接着剤で貼り合わせながら、西森の首に装着したのだろう。

手仕事による苦心の跡は見てとれ、アクリルがところどころいびつにうねり、接着剤がはみ出している。
こまったように眉根をよせる、伊藤女史の顔が脳裏に浮かんだ。


こちらとしては、接着剤が強力なタイプでないことを願うばかりだ。


なぜ願う?