背をすくめ、パイプをやりすごしながら、奥へと足を進める。

狭くぬりこめられた暗闇にふさわしい、ホコリとカビのにおいが鼻孔をふさぐ。


ちょうどなかほどの床に、こんもりしたかたまりを見とめて、近づく。
主役は舞台の中央に。それがふさわしい。伊藤女史もそう考えただろう。


かがんで膝をつき、ライトをかざす。案の定、横たえられた西森だった。
温かみを欠いたライトのその中に、彼女の顔が白くさえざえと浮かび上がる。


僕の気配に、西森がうすく目を開け、射しこむライトに反射的に顔をそむけ目を閉ざす。
それから、そろそろとまぶたを持ち上げる。


「携帯のライトは、案外明るいものだな」
僕は思ったことを口にした。