「なんだと思う」


「連想するのは、爆弾です」


「俺もそう思った。ちなみに借りたのは、犯罪捜査のルポタージュだ」


気になる言葉がありますね、西森の白い指が一点を指す。



《 7月×日 犬での実験は成功 》


 
「そう。2ヶ月くらい前に起こった事件をおぼえてるか」

「犬が殺される事件がありました」



夏休みに入る直前、僕たちが住む市内のとある一軒家で、飼われていた犬が何者かに殺される事件が起きた。

異常だったのは、その殺害方法だ。

庭におかれた犬小屋で飼われていた犬で、殺害時刻は深夜だった。

尋常ならざる爆音に目をさました住人が窓から目にしたのは、 “かつて犬であったもの” だった。
首と胴体は分たれ、飛び散った血と肉片が、塀にべっとりとこびりついたという。


捜査の結果、犬は首輪に時限爆弾を取り付けられ、爆死させられたことが判明した。

胃の内容物からは、睡眠剤入りの肉が検出されたという。

眠らされていたとあっては、最期の哭声をあげることもできなかっただろう。と、これは僕の勝手な推測だ。


手口の凄惨さと爆弾のもつ殺傷力は、人々の恐怖をかきたて、次の犯行を予感させるのに十分だった。