こうして僕と西森が放課後に学内図書館で小声で会話をかわすのは、めずらしいことではない。


目撃した連中のなかには、僕と西森の仲を、あれこれ噂する者もいるようだが、さて本当のところを知ったらどんな顔をするだろう。

もっとも信じてもらえるとは思えないが。



「面白いものを、みつけた」

隣の席においた鞄に手をのばす。


なんでしょう、西森が視線をふりむける。
まっすぐに落ちかかる髪のあいだに、白い喉と細い首がのぞく。頭をささえているのが不思議に思えるほど、細い首だ。



僕が取り出したのは、一枚の紙片だ。A4のルーズリーフを四つ折りにしてある。広げてみせる。


「おととい借りた本に、はさまってた。前に借りた誰かが、栞がわりにして忘れたんだろう」



白紙ではなく、筆圧の強い走り書きが並んでいる。
硝酸カリウム、ニトログリセリン、ニクロム線、旋盤、手袋・・・