『世界』と『終』  ——僕がきみを殺したら——

なにかが、この刹那に彼の注意と視線を奪い、動きを凍りつかせたように僕には映った。

それが何なのかにまで思いを巡らす余裕はない。


その隙をのがさず、鞄をたてに上体を低く体当たりを食らわせる。

ナイフが彼の手から吹っ飛び転がってゆく。

マウントポジションをとり、勝敗はついた。



自分が熱をあげている女子生徒があんたに好意をもってるのが気に食わなかった———


川上ヒサシと名乗った相手は、ぼそぼそとそんなことを語った。


つまり同じ高校の生徒らしいが、その時まで、川上ヒサシにもその女子生徒にもおぼえはなかった。

あるいは彼はナイフに魅入られ、誰かを傷つけてみたかっただけという気もした。


僕と川上は、少しだけ似ているのかもしれない。彼の欲望のほうが控えめで慎ましいが。



服のほこりを払って立ち去ろうとする僕に、座りこんだままの川上がつぶやいた。



「死神・・・」